当院は年間2万件を超える内視鏡検査・治療を実施している消化器専門病院である。早期胃癌の治療手技として普及している内視鏡的粘膜下層剥離術(以下ESDと略す)を、ITナイフが開発され手技が確立されはじめた2000年より取り入れ、現在年間約100例を実施している。内視鏡下の手技とはいえ、時に手術に準じたハイリスクな施術であるため、患者の不安の軽減と適切なアセスメントは重要である。2002年10月から術前訪問を開始し、同年12月からは担当する看護師が医師の術前説明の段階から立会い、治療介助へと一貫して関われるようにしたことで、以前よりもコミュニケーションが図れ、情報収集もスムーズになった。本年1月、従来使用していた術前訪問用パンフレットの改訂を機に、患者と看護師にアンケート調査を実施し評価にあたったので報告する。
術前患者が抱えている不安の内容を把握し、パンフレットを用いた術前訪問の効果とその評価をする。
1 調査期間:2007/1/16~2007/6/18
2 調査対象:ESDを実施した患者20名(男性 15人平均年齢61.5才。女性5人平均年齢69.4 才)と、担当看護師7名(20件)。
3 調査方法:患者に対しては、ESD施術2日以後にアンケート用紙を配布し、後日回収とした。看護師に対しては、ESD終了後にアンケート調査をした。(回収率100%)
患者・看護師へは、口頭と紙面にて調査の協力を依頼、無記名自記式で回答してもらい、その内容で患者を特定出来ることはないこと、研究協力は自由であることを説明し了解を得た。
1 患者アンケートより




Q5.説明時間はどうでしたか?
丁度よい:19人 短い:1人

Q7.治療前の内視鏡看護師の訪問は必要だと思いますか?
必要である:20人 必要ない:0人
2 看護師アンケート調査より
Q1.患者からどのような不安の訴えがありましたか?
不安の訴えなし:11件
その他:初めてだから不安・治療後にお腹がいたくなるのかな?
・尿がもれないか心配 など
Q2.患者からどのような質問がありましたか?
質問なし:9件 その他:費用・定期検診について・内服について・
食事はいつから始まるか?・着替えはいつすればよいか?・治療開始時間は?
Q3.パンフレットに沿って必要な情報収集ができましたか?
できた:19件 できなかった:1件
Q4.パンフレットに沿って必要な説明ができましたか?
できた:19件 できなかった:1件

今回の調査で患者は治療に対し、複数の不安を抱えていることが明らかになったが、看護師アンケートには「患者から不安の訴えはなかった」という回答が11件もあり、患者は不安を持っているが、看護師には打ち明けられない状態にあることも明らかになった。しかし、術前訪問の説明により不安が軽減され安心できたとの回答は多く、術前訪問は100%の患者が必要としている。図7より訪問時間は、概ね20分以内に終了し、患者アンケートQ5からも9割以上の患者から満足を得ている。パンフレットを使用することにより、看護師の説明が均一化されたことが要因と考えられるが、10~20分という限られた時間の中で、真の満足が得られたのかどうか、今後も検証していく必要がある。
医療の場においてインフォームドコンセント(以下ICと略す)は今や欠くことはできない。起こりうる偶発症についても説明が必要であるが、知識を得ることで患者の不安が増すことがある。それが、図1より「出血したり、穴が開かないだろうか」11件という結果から推測できる。パンフレットに掲載した治療後の写真を見て、不安を感じた患者もいる。患者の一番の不安は「再発しないだろうか」で、出血や穿孔に関する不安は治療が終了し退院する頃には消失してしまうものであるが、再発に対する不安に関しては退院後も拭い去ることはできない。患者が必要とする情報をどこまで提供すべきか、判断の難しいところではあるが、今後治療成績なども提示し不安の軽減につなげたい。
改訂した術前訪問用パンフレットは、絵や写真を増やし、文字を平均18ptと大きくしたことにより、患者からは見やすく分かりやすかったと良い評価が得られた。また、看護師からも必要な情報や説明をもらさず収集、提供できたとの評価を得ており、訪問用パンフレットを有効に活用できたと考える。
内視鏡看護師は、患者と接する時間が短く、患者が抱く不安を傾聴できるようなコミュニケーションを図ることは難しい立場にあるが、ICに立会うなど治療前から関わりを持ち、術前訪問の際には補助的手段であるパンフレットを用い視覚にも訴えることで、患者の治療への理解を深め、不安を軽減させることは十分可能である。
今後の課題として、不安があっても担当看護師にその不安を表出しきれなかった要因を検証し、真の満足度が得られるよう、個別性のある内視鏡看護の充実を目指していきたい。