○村上 由美、市川 春美、井上 恵子、北岡 由紀子、白倉 真由美、酒井 茜
医師:深尾 俊一、舟曳 純仁
当院は、病床数67床の消化器専門病院である。2000年に内視鏡的粘膜下層剥離術(以下、ESD)を導入し、昨年度は64件のESDを施行した。当院のESDチームは医師2名、看護師2名で構成し、看護師は医師の直接介助および患者管理を担当する。ESD導入時より、看護師の役割である周手術期看護としてパス・看護記録・患者管理について検討を重ねてきた。今回、ESDの周手術期看護について重症化症例を経験したのでここに紹介する。
80歳代 男性 他院で胃病変があり外科的手術を勧められた。その後、当院受診GIF施行
組織検査の結果、体上中部後壁にadenocarcinoma内視鏡治療の適応と診断
本人・家族にICを行い、ESDと治療方針が決定
家族の希望で本人へ病名告知なし 既往歴:なし 手術歴:前立腺肥大OP
術前検査で肺機能低下を認め、禁煙指導とトリフロー呼吸訓練を開始した。
【医師からの情報】予定所要時間4~5時間 UL(±)、GIF-Q260J GIF-Q260M2T
拡大内視鏡、ムコアップ、先端アタッチメント、炭酸ガス 準備の指示
【カルテからの情報】アレルギー・感染症・既往歴・機能障害・抗凝固剤内服なし
術前検査結果で、凝固終了時間18分 呼吸機能障害分類RESTあり肺気腫と判明


【術前訪問】ESDの流れを説明すると同じ質問を何度か繰り返す。その都度説明すると納得する。トリフロー呼吸訓練実施の確認をすると曖昧な返答
標準看護計画 「#1 呼吸器合併症のリスクが高まる」を立案
【術中経過】所要時間7時間12分 切除物80×78mm
ロヒプノールⓇ3.5mg ペンタジンⓇ15mg×5A ペルジピンⓇ2mg使用
出血が多く難渋し手術時間延長。血圧変動があり薬剤でコントロール。頻回に吸痰施行するが吸引物は白色粘稠痰少量。呼吸状態はO2 3L使用下でSpO2 98~100%
治療時間4時間経過した頃、一時SpO2低下を認めた。末梢循環良好

ESD翌日のGIFで遅発性穿孔ありクリップで縫縮。
数日後腹膜炎、誤嚥性肺炎を併発し徐々に呼吸状態悪化。CO2ナルコーシスとなり挿管。
DIC状態となる。1週間後気管切開施行。毎日BFで吸痰施行し徐々に改善みられ
ESD後32日目に気管カニューレ抜去。リハビリ開始。ESD後47日目に退院。
【術中看護アセスメント】
①80歳代と高齢 ②BMI 19.93 と痩せ形 ③凝固終了時間が18分と遅延傾向 ④肺気腫あり呼吸機能データも低値 ⑤喫煙歴あり
標準看護計画 「#1 呼吸器合併症のリスクが高まる」を立案
【術中看護実践】
O-P(観察計画)T-P(療養計画)E-P(教育計画)に沿って実践
【評価の視点】
1.呼吸管理に対する看護の実践
2.高齢者に対する看護の実践
3.病名告知なし、治療に対し消極的な患者に対する関わり
<術前>トリフローによる自宅での呼吸訓練の評価が未実施のままESD当日を迎えている。術前にリスクを回避するため、外来に於ける術前看護ケアが提供できたか。
<術中>高齢・呼吸機能のハイリスク患者に対し医師・看護師で情報を共有できたか。また、ハイリスク患者をどの様にとらえて計画立案し術中看護ケアを提供したか。
<術後>術中経過を基に、病棟に於ける術後看護はどの様に展開されたか。

周手術期看護とは、術前・術中・術後の全期間を通じて、患者に一貫した全人的看護ケアを提供することである。ESDにおける周手術期看護では、内視鏡看護師が主に術中を担う。治療が安全かつ迅速に遂行される様、部屋準備や使用機器・デバイスの点検と準備、施行医師の介助、患者管理を実践する。技術的に高レベルな症例やリスクの高い症例は、医師の熟練度と共に、看護師には外科的治療に匹敵する周手術期看護が求められる。
医師と情報を共有し、医師・看護師各々の立場で患者をアセスメントし、チームとしてESD患者に関わる必要があると考える。
1)竹内登美子:周手術期看護2.医歯薬出版株式会社.2007
2)大山真貴子:周手術期看護Ⅰ基礎編.S-QUE院内研修1000’Eナース.2010
3)大山真貴子:周手術期看護Ⅱ応用編.S-QUE院内研修1000’Eナース.2010