当院は、検診センターを併設する消化器専門病院で、年間13000件を越える上部内視鏡検査を実施しており、早期胃癌の発見率も高い。そうした中、内視鏡による早期癌治療の第一選択として位置づけられている内視鏡的粘膜切除術(以下、EMR)の適応も増加してきている。EMRはポリペクトミー法、吸引法が主流であったが20mmを超える病変は一括切除が難しく、断端陽性例や再発例があった。しかし、ITナイフを使用したカッティング法が開発され確実な一括切除が可能となり、適応が拡大され当院にも取り入れられた。
1.マーキング
針状ナイフでマーキングする
2.局注
病変の外周に局注する
3.プレカット
針状ナイフでITナイフを入れる穴をあける
4.粘膜の全周切開
ITナイフでプレカットの穴から全周を切開する
5.粘膜下層の剥離
ITナイフで粘膜下層を剥離する
カッティング法は切除範囲が大きく、手術時間が長時間に及ぶこともあり、患者にとって苦痛を伴う侵襲の高い処置であり、偶発症の危険性も高い。そのため、術前には充分なインフォームドコンセントを行い患者及び家族が内視鏡治療について理解した上で、より安全で安心して治療に臨めるよう医師のみでなく内視鏡技師、看護師が術前から術後を通じて患者との関わりをもつことが大切である。
今回、我々は、情報伝達方法の確立と安全なよりよい看護の提供を目的とし、いくつかの改善を行なう中で、一定の成果を得たので報告したい。
情報伝達方法の確立と安全なよりよい看護の提供
1.患者用・看護師用クリティカルパスの作成
患者用クリティカルパス(以下、~パス)は、予約用紙を兼ねたイラスト入りの見やすい形式にし、従来、入院当日朝までの注意事項の説明だけであったが、術前・術後のスケジュール・注意事項をのせたパスを患者に前もって渡し、読んでもらうことで不安の軽減につながったと思われる。
また、内視鏡看護師は治療直前まで患者との関わりがなく、術前の経過や術前で収集された情報の把握がしにくい状況であった。病棟看護師から内視鏡看護師への申し送りも不十分であったため、書類の提出不備や入院後の患者の状態、治療上必要な情報も充分把握できていなかった。そこで、看護師用パスを作成し、外来~病棟~内視鏡~病棟と患者の情報を共有し、複数回チェックを行うことにより情報伝達ミスをなくすことができた。看護師用パスでは、緊急時の対応に備えた術前検査を実施し、その結果をチェックすることにより患者の身体的状態の把握ができるようになった。万が一、偶発症や合併症が起きた時でも患者にとって最も適切な対処ができると考える。
2.術前・術後訪問の開始
術前訪問は、患者の治療に対する認識や理解の確認ができ、患者が疑問を持ったまま治療へ進む事のないように補足説明を行う事により、患者の治療への理解と不安の軽減につながったと思われる。実際、患者・家族からは「治療は苦しくないか」 「痛みはないか」という不安や治療時間・治療後の経過についての疑問が多く聞かれた。
また、術後訪問では、術前から関わりをもった内視鏡看護師が訪室することで患者に安堵感を与えることができた。しかし、更なる不安を打ち明ける患者もあり、病棟担当看護師や主治医へ情報提供している。
こうしてパスや術前訪問を通じて得た情報から内視鏡看護師が患者の身体的、精神的問題を整理し、EMRに伴う基本的な問題点に加え、個別的なアウトカムを設定し術中、術後看護に役立てられるようになった。
3.術中看護記録の見直し
従来の記録用紙は治療経過の記入欄がなく、記入方法も統一されておらず、病棟でもあまり活用されていないのが現状であった。そこで、術中看護記録の見直しを行った。経時的に治療、処置の内容を把握できる様式にすることで、治療経過がイメージでき問題点が明確化され、継続した看護に生かされるようになった。
4.体制の見直し
治療の複雑化に伴い、医師・介助者の体制を見直した。医師は、術者1名であったが、緊急時の対応や患者管理の面から必ず2名体制とし、介助者は3名の担当固定制を取り入れた。直接介助者1名、間接介助者2名、と役割分担し、2ヶ月間固定して担当することで、繰り返し経験でき、治療の流れや手順の理解を深め、熟練した技術の習得が可能となった。また、担当固定制を取り入れたことでスタッフ間の意識も高まり、個々が担当した役割のマニュアル作りへとつながった。
ITナイフを用いたEMRを経験し1.パスの活用により情報伝達方法の確立ができインシデント・アクシデント防止のツールとなった。2.術前・術後訪問を開始したことで内視鏡看護師と患者間に信頼関係ができ、患者の不安の軽減・満足度の向上へとつながった。3.術中看護記録の見直しにより内視鏡治療の内容が伝わり継続看護に生かされるようになった。4.体制の見直しにより治療の安全性は高まり、内視鏡看護師の専門的知識・技術の習得により看護の質の向上へとつながった。
内視鏡治療の多様化、複雑化に伴い内視鏡技師、看護師の占める役割は大きくなってきている。今後も業務内容を見直し、安全性と確実性を高め、よりよい看護の提供ができるよう努めていきたい。