はじめに
近年、内視鏡機器・技術の進歩は目覚しく、それに伴い、 内視鏡治療はより高度化してきている。中でも、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、 病変の大きさや潰瘍瘢痕の有無に関わらず、一括完全切除を可能とした。
当院では、2000年に導入し、現在、年間約100件を施行しており、その適応は、 食道・大腸へと拡大してきている。
調査の背景
術中の止血処置や剥離操作に難渋する症例は、所要時間を大きく左右する。予測に反して治療が遅延し、突然の多量の発汗・四肢冷感の出現など一般状態の変化や、治療後に筋肉痛様の痛みを訴える症例を経験しセデーション下・同一体位で、治療が長時間に及ぶ事 が、患者の身体にどのような変化をもたらすかを、体温と体圧の変動に視点を置き、調査に取り組んだ。
目的
・より安全な内視鏡治療の提供
・内視鏡看護の充実
対象および方法
1)セデーション前・直後の体圧測定
・症例1:56歳 女性 身長153㎝ 体重58kg
・症例2:58歳 女性 身長158cm 体重56kg
CAPE製 プレシャースキャニングエイド セロ CR-270を使用し、ESD直前、 ベッド上で左側臥位となった状態で、鎮静剤(ロヒプノールR1mg)を静注する直前・直後に、上腕部・大転子部の体圧を測定した。
2)体温の測定
・症例1:77歳 男性 治療所要時間 約6時間
・症例2:58歳 女性 治療所要時間 約2時間
コーリン社製 生体情報モニター Mone BP-88Siを使用し、 治療中の体温を5分間隔で測定した。
結果
1)セデーション前・直後の体圧測定
・症例1
(表1) <56歳 女性 身長 153cm 体重 58kg>
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治療中の体温は、最低35.2℃、最高35.8℃であった。急激な変動はないが、治療開始後20分を経過したところで徐々に体温が下降しはじめ、最低体温で治療終了となった。
考察
1)セデーション前・直後の体圧測定
毛細血管の内圧は32mmHgであり、それ以上の圧力で血管が圧迫されると、 血液が流れなくなり、皮膚組織が破壊されてしまうと言われている。セデーション直後、 症例1は、大転子部に55.1mmHg、症例2は、上腕部に36.1mmHg、 大転子部に33.3mmHgと、32mmHgを上回る体圧がかかっている。
治療には、鎮静剤と鎮痛剤を併用するため、強い睡眠作用と全身の筋弛緩により、 左半身には、更に大きな圧力が生じていると推測される。 この状態が数時間にわたり持続されているとすれば、かなりの負荷がかかっていると予測され、 治療後の筋肉痛様の痛みは、長時間の同一体位が要因となり、 セデーションにより増強されていると考えられる。
2)体温の測定
治療の経過と共に、体温は下降していることが明らかとなった。その因子としては、鎮静剤などの薬剤使用・治療中、繰り返し行われる洗浄・出血量などによるものが 推測されるが、今回の調査では、その分析には至らなかった。 治療中に見られた四肢冷感・多量の発汗や震えなどの症状に関しては、体温変動による 身体反応として、熱の産生と放出を保つため出現していたと思われるが、 その因果関係は、はっきりしない。
まとめ
1)以前より、術中体位を安定させ、安楽な体位を保持するため、体圧分散枕を使用している。
この調査で、セデーション後、左半身への体圧が上昇していることが明らかとなったので、 今後、ベッドにも体圧を分散できるマットレスの使用を視野に入れたい。
2)現在でも、治療が長時間に及んだ場合や症例にあわせて、電気毛布の使用や、 塞栓予防の目的でプレキシパルスを使用しているが、その使用基準は定めていない。 現段階では、全症例に体温測定を実施することはできないため、今回の調査を更に分析し、 患者の年齢や体型・治療時間などの基準を定め、患者管理をしていきたい。