
当院ではストーマケアの早期自立を目指し、
術前から退院までストーマスケジュール表を活用しています。
この夏、「高齢患者自身でのストーマケアを絶対条件」に求められた症例を経験しました。
家族などの第三者にケアをゆだねることが多かったこれまでの高齢者への指導とは違い、
社会復帰に向けて苦労したこと、学んだことが多くありました。
この症例を通して、高齢者のストーマケアに必要なものを考える機会を得たので、
報告したいと思います。

患者S氏を紹介します。
S氏の入院により夫は介護者不在となり、施設へ入所しました。
同居の準備が整うまで、夫と同じ施設へ入所する予定です。
入所の条件として、「ストーマのセルフケアができること」を求められました。

手術前の状態は画面の通りです。自分では身の回りのことが行えず、介助が必要でした。

当院では術後2日目から、患者にストーマケアの指導を開始します。
S氏の皮膚は改善し、痛みや倦怠感も軽減してきましたが、
体力消耗は激しく、1週間目にようやく指導を開始できるようになりました。

高さのあるストーマですが、皺や窪みなどにより、補正が必要でした。


便は水様で多量でした。
スティックペーストやリングペーストの使用により皮膚を補正しました。
しかし十分対応しきれず、装具を凸型のツーピースタイプに変更し、
スティックペーストも使用することにしました。

多量の水様便により面板の溶けが早く、連日便漏れを起こしたため、
各勤務帯でペースト補充を行い、皮膚トラブル防止に努めました。
また便性を整える内服薬の投与もしました。

指先には痛みが残り力も入りづらく、細かい作業は困難でした。
このため、自分で裾処理できるように、マジックテープの採便袋を選択しました。
スペンコフレークスを1回分ずつ分包したり、
サニーナをスプレーしなくてすむように容器を移し替えることで、扱いやすくしました。
また、採便袋を面板から外すことができなかったので、
指を引っかけて外せるように採便袋のフックに紐を付けました。

装具交換の手順書は、S氏が使う装具に変更し、カラー印刷で見やすいものに作りかえました。

「できない、やって」との気弱な発言には、押し付けにならないようにケアを進めました。
「次はこれでよかったのよね?」と、手順を一つひとつ確認されるので
「手順書を見ながら行うように」と声かけしました。
できた時には「すごいね、よくがんばりましたね」と褒め、やる気を引き出し、
自信がつくようにしました。
また、装具交換を入所する施設の看護師にも見てもらい、
「必要時には援助を」と依頼することや、今後のことも考え、
次女にもストーマケア指導をすることで、S氏の不安軽減に努めました。
S氏は初め、積極的にケアへ参加することができずにいました。
また、看護師が「ここまではできるだろう」と期待することと、
S氏が「できる」と思っていることには差があり、
「がんばっても、できない」と言われたこともありました。
しかし、スタッフの言動や指導方法を統一し、S氏に合わせた工夫を重ねました。
さらに次女の協力や夫への面会、気分転換の外出なども、
S氏によい影響を与え、時間はかかりましたが、ストーマケアを自立することができました。

病名告知による心理的負担や極度な体力低下、痛みなどの苦痛は、
高齢化による身体機能の変化や適応能力の低下とあいまって、S氏を気弱にしました。
S氏はストーマ造設により、排泄様式の変化だけでなく、
退院後の生活に大きな変化を余儀なくされました。
今後の生活への苦労を予期し、不安を抱くようになったことも、
セルフケアできるまでに時間を要した原因の1つになったのではないでしょうか。
S氏が目に見えてストーマケアに積極的になったのは、夫に面会してからでした。
「主人の世話は私がするのだから、自分がしっかりしなくては」と言われました。
この症例では、体力の回復を待ち、本人のやる気を起こすことも、
患者がストーマケアを積極的に行う上で大切であると学ぶことができました。
高齢者のセルフケアを支援するためには、手技の工夫も重要ですが、
精神面での援助も欠かせません。患者の状態を把握し、必要な時に、
出来る限りのサポートをしていくことが不可欠と、改めて認識しました。

高齢者では、ストーマケアの自立に時間を要したり、
身体的・精神的なリスク、さらには退院後の生活サポートの有無など、
様々な問題を抱え、スケジュール通りに進まないことが多くあります。
しかし今後は、独居や核家族化などにより、
高齢者でもセルフケアを余儀なくされるケースが増えると考えられます。
安心して退院後の生活を送るためにも、セルフケアは重要です。
残っている機能を生かして、個別の工夫をしていく必要を強く実感しました。
メーカーには、高齢者がより扱いやすい装具の開発を望みたいと思います。
当院ではストーマケアグループを作り、より良いケアを提供できるように、
知識・技術の向上に努めています。
この症例をきっかけにスケジュール表や手順書を見直したので、
今後に活用していきたいと思います。