従来よりおなかの病気に対しては、開腹手術といっておなかを大きく開き、目的とする臓器を切除したりその他の処置をする手術が行われてきました。
しかし患者さんにとっては、全身麻酔であるからと言ってもおなかにおおきなきずがつくのは、術後の痛みや傷あとの美容的な問題からできるならさけたいものです。我々外科医もつねに、より小さなきずで、しかも安全に確実な手術を行いたいと考えてきました。
1987年、フランスのフィリップムーレはそれまで主におなかの中の検査のために使われていた腹腔鏡をつかって世界で初めて胆嚢摘出術をおこないました。小さなきずの手術の始まりです。その後この手術は日本にもたらされ(1990年)、以後急速に普及してきました。今では日本中の胆嚢摘出術の約80%が腹腔鏡下に行われています(日本内視鏡外科学会 内視鏡外科手術に関するアンケート調査 第8回集計結果報告による)。
当院では1992年から腹腔鏡下胆嚢摘出術をおこなっており、現在までに約470例(2007年12月現在)行っております。
また大腸癌についても2006年より積極的に腹腔鏡下手術を行っており、2006年には10例、2007年には30例の腹腔鏡下大腸切除術を行いました。
1991年世界初の腹腔鏡下幽門側胃切除術が日本で行われましたが、技術的に難易度が高いことや開腹手術と同等の予後(切除後の5年生存率など)がえられるかという疑問があり、なかなか腹腔鏡下胆嚢摘出術のようには広まりませんでした。しかし、著名人が腹腔鏡下手術を受けたことや、傷が小さく術後の痛みも少ないことから徐々に広まり、2007年には全国の胃がん手術の約20%が腹腔鏡下に行われるようになりました。当院でも2009年から腹腔鏡下幽門側胃切除術を導入し、良好な治療成績をおさめております。
手術2日前から入院します。手術までの間に胃カメラを行い、腫瘍の口側にしるしをつけます。
入院日から絶食とし、下剤を飲んで胃・腸を空っぽにします。(腸に便がたまっていると手術がしにくいため)
午後から手術室にはいり、全身麻酔をかけ、手術開始。
3~4時間の手術時間と40~50分の麻酔時間がおわればお部屋に戻ります。(患者さんの体格、病変の状態などにより時間は変わります。)
当日はしっかりとした痛み止めを24時間持続でおこないます。痛み対策は積極的に行っています。
3-4日目ころから重湯(米粒のないお粥)が始まります。食事はお粥からご飯へと少しずつ変えていきます。
おなかにドレーンという管が入っている人は、4~6日目に抜けます。
退院時期は病状や経過により変わりますが、手術後2週間程度となることが多いです。
溶ける糸で傷を縫うので抜糸はありません。
青い線の中を切除します

食べ物は赤い線を通って流れ、肝臓や膵臓から出た消化液は青い線を通って流れます。
1.前もって胃カメラでクリップを腫瘍の口側につけます。
2.手術室で麻酔がかかった後お腹に6箇所孔を開けて手術を始めます
3.大網を切ります
4.血管①(左胃大網動脈・静脈)を切ります
5.血管②(右胃大網動脈・静脈)を切ります
6.小網に孔をあけます
7.胃の出口側を器械で切ります
8.血管③(右胃動脈・静脈)を切ります
9. 小網を切ります
10.血管④(左胃動脈・静脈)を切ります
11.小さな創を開けて胃を外に出します
12. クリップを目印に胃の口側を切って胃の切除は完了です
13. つなぐ小腸に目印をつけます
14.小腸同士をつなげます
15.残った胃と小腸をつなぎます
16.最後にお腹の中を洗い、出血が無いことなどの確認をします
17. 傷を縫って麻酔を覚まし、手術の終了です